深読み第六弾 43巻レビュー

深読み43巻レビュー


43巻には、「北島マヤが如何にして阿古夜の演技を掴むか」が、主に描かれている。
そしてその裏では、速水真澄と北島マヤの恋の切なさが描かれつつ、鷹宮紫織が速水真澄へ不信感をつのらせて行く様が描かれている。

それでは、順を追って検証しよう。
(サイト発表日:2009/08/25)


(1)北島マヤ
43巻は、キッドスタジオでの黒沼組の練習風景から始まる。
練習が行われている中、桜小路のガールフレンド舞がやってくる。
桜小路が携帯電話で自宅に電話をしているのを見てしまった舞は、何故、自分には連絡をくれないのだろうと思う。
舞は桜小路がおいていった携帯をこっそり見てしまう。そこには桜小路とマヤが仲良く移っている写真があった。
怒りに我を忘れた舞は稽古場に乗り込みマヤを激しくなじる。桜小路は舞を止めるが、舞は桜小路にも不満をぶつけて、稽古場を走り去ってしまう。
桜小路は舞を呼び出し、舞に別れをつげる。その足で、マヤに会いに行った桜小路は、舞とは別れた事、自分と付き合ってほしい事をマヤに告げるのである。
マヤは、試演が終わるまで待ってくれるように桜小路につげる。
一方、速水真澄は秘書の水城から桜小路がマヤに交際を申し込んだ事、マヤが「紅天女」の試演までは返事をしない事を告げられるが「おれには関係ないことだ」と返事をし、鷹宮紫織との親族の集まりに行ってしまう。
その帰り、偶然、桜小路とマヤを見かけるが、紫織の「仲がいいのね お似合いだわ」の言葉に「ええ たしかに たしかに… お似合いだ…」と答える。

この時の真澄の表情には、マヤへの気持ちを押し殺した切ない気持ちがよく表されている。
42巻の最後は桜小路とマヤの写真を見て瞬間怒りを爆発させた速水がコーヒーカップを割ってしまうという所で終わっていたが、すでに、43巻では自分の感情を抑制できている。

アパートまでマヤを送っていった桜小路は偶然流れ星を見つける。桜小路の願い事をした事があるかという問いにマヤは、「うん いいの もう叶わないってわかったから…!」と答える。
同時刻、鷹宮邸の前で、同じ流れ星を見上げる紫織と速水。紫織の流れ星に願い事をした事があるのかという問いに「いいえ…! どうせ 叶いませんから」と答える真澄。
この時、珍しく速水が紫織に本音を言っている。「(略)どうせ叶う事のない願いなら夢みるだけ無駄というものです。 夢は捨てました。」
実は、紫織は速水の気持ちに、前々から不信を抱いているのだが、今回も「叶う事のない願い…」という速水の言葉に不信感を強くしてしまう。

ここでは、同時刻、同じ流れ星をみて、同じように「叶わない願い」という言葉を口にする二人の姿に「二つに分かれた一つの魂」というテーマが具体的に表現されている。

ここまで、42巻の流れを受けたマヤと速水のそれぞれの恋を諦めた結果が描かれている。
この後、43巻のテーマ「北島マヤが如何に自分の阿古夜を掴むか」が描かれていく。

キッズスタジオにて、黒沼から怒られるマヤ。
阿古夜として、薬草摘みと谷川の水汲みが出来ないマヤは、一人物置で練習する事にする。

ここで、ガラスの仮面の主題について再度考えてみよう。
第一主題は、北島マヤというなんの取り柄もない少女が、演劇という生き甲斐を見つけ大人へ、一流の女優へと成長して行く話である。
第二主題は、速水真澄の紫のバラに象徴される「無償の愛」だろう。

そして、幾つかのサブテーマが存在する。
43巻においては、38巻において提示された宗教的テーマ「生命はすべて同等である」が再度「紅天女」の台詞として提示される。

「天地一切の万物がわたしと同じものであり
 わたしと天地一切の万物が同じものである」

あらゆる生命が同等であるとしたこの台詞。恐らく、「紅天女」をどういう芝居にするかを考えて行く過程で、出て来た主題だと思われる。作者の宗教への傾倒が色濃く反映されている。
このテーマをマヤが如何に理解し、演技にどう表現していくかが、43巻に描かれている。

余談ではあるが、作者が何故、未刊行部分をそのままコミックスにしなかったのか。
恐らく、やっと数十年をかけて、マヤにどういう紅天女を演じさせるかが決まった為ではないかと私は思っている。

さて、物置にこもったマヤは、再度、阿古夜の台詞を考えてみる。何か掴めそうに思うがなかなか掴めない。
そこで、黒沼に修行をした山と同じように大自然が感じられる所であれば掴めそうだと言う。
黒沼はマヤを公園に連れて行き指導する。山で学んだ事をもう一度やってみようと思うマヤだが、ここで姫川亜弓が登場する。
紅天女の試演には多くの一般人が参加する事を見込んで小野寺は姫川の練習風景を記者に披露する。
姫川は、役の本質を掴む前に、まず、鍛えられた自身の肉体で女神を表現するのである。
その様子はテレビに映し出され大反響を呼ぶ。
それを見たマヤも亜弓の演技に圧倒される。黒沼は、姫川を気にせず自分の阿古夜を掴めとマヤに指導するが、落ち込むマヤ。

一方、速水真澄は、姫川の演技がテレビで放映されるとマヤの事が気になり、黒沼を屋台に呼び出し様子を聞く。
黒沼の「『本物』の紅天女」という言葉に速水は強い感銘を受け、続いて「『本物』の紅天女を演じられるのは北島マヤだけだ」という台詞に黒沼がマヤにどういう演技を求めているか知るのである。

相変わらず公園で自分の阿古夜が掴めないでいるマヤの元に速水が訪れる。
速水は強引にマヤを陸橋の上に連れて行くと、ここで紅天女を演じられるかと問う。
周りは、ビルが乱立し、陸橋の下では車が走り騒音を立てている。
マヤは、阿古夜の台詞を言ってみるがとても演技は出来ない。
速水は、マヤに
「(略)紅天女の心と言葉も この現実の世界の前ではなんのリアリティももたない…
 マヤ、俺に紅天女信じさせてくれ…!」と告げる。

マヤは、この言葉をきっかけに、自らが演じる阿古夜を掴んでいくのである。

自分自身が紅天女を信じなければ人に信じさせる事が出来ないと気づくマヤ。
その時、たまたま、聞こえてきた「ありがとう」の言葉に、大自然に住まう神々への感謝こそ阿古夜の行動の基本であると気づくのである。

一旦、きっかけを掴むと役の本質にするりと入ってしまうマヤである。
ここからはマヤがどんどん、役を掴んでいく様が描かれていて、爽快である。
麗の出した朝食に「いただきます」と答えて手を合わせるマヤに、マヤの演じる阿古夜の完成形が垣間見える。

ここまでの部分が43巻のメインテーマである。

次に、稽古場に戻り黒沼に演技をしてみせるマヤ。
黒沼はマヤがかなり役を掴んでる事は認めつつ、阿古夜の一途な恋の演技が出来ていない事を指摘する。
そこへ、週刊誌を持った役者やって来る。週刊誌にはマヤを評して「お祖末なライバル」と書かれている。落ち込むマヤ。
そんなマヤに紫のバラの花束がフローリスト花房(聖)によって届けられる。

 余談だが、マヤへの恋心をあきらめた筈の速水が、マヤが窮地に陥るとこうして紫のバラの花束を送って支えようとする。
マヤが決して自分を愛する事はないと思っていながら。その愛の深さに泣けます。

メッセージには
「(略)誰がなんといおうとわたしはあなたの才能を信じています。(略)」と書かれている。
メッセージを読んだマヤは、紫のバラの人に「会ってほしい」と花屋にメッセージを頼む。
速水と会ったあの陸橋の上でマヤは紫のバラの人を待つのだが、その人は来ない。
一方、速水は、会ってほしいと言われても、会いに行くつもりはない。
会ったら唯一の絆が切れると思って、会いに行けない。だが、マヤの事が気になって仕方がない。
とうとう、仕事にかこつけて、陸橋の下の道を車で通るのだが、その時、「お祖末なライバル」という記事を書いたやくざな記者2人がマヤに絡んでいる。
その結果、陸橋から紫のバラの花束が落ちてしまう。
車にひかれてバラバラになる花束。そこに、黒沼と桜小路が駆けつけてくる。こそこそと立ち去る記者達。
粉々になった花束の中に1本だけきれいな紫のバラを見つけ思わず口付けをするマヤ。
その様子を遠くから見守る速水。
マヤと桜小路が黒沼の指示でその場を立ち去った後、速水に気づいた黒沼は、
「あいつが恋しているのは、(略)どうやら紫のバラの送り主のようだ」と告げる。

この言葉を聞いた速水の戸惑った表情が1ページを割いて描かれていて実に感慨深い。
マヤの恋心を知った事が、42巻において徹底的に失恋して落ち込んだ速水が浮上していくきっかけとなるのではと思っている。
物語が完結するまで(完結すればだが)は、なんとも言えない事ではあるが。

そして最後は、44巻に続く月影千草の登場で43巻は終わっている。


(2)鷹宮紫織
さて、43巻には、もう一つ、44巻に続く重大な伏線が張られている。
鷹宮紫織は、速水真澄こそ「紫のバラの人」であるという確証をこの後掴むのだがその伏線となるエピソードが幾つか描かれている。
一つ目は、速水と流れ星を見ながら交わした会話から「叶う事のない願い…」という言葉に速水が叶う事のない願いを持っていた事を紫織は知る。
次に、速水とのデートの後、紫のバラの花がほしいという紫織に「その花だけはだめだ」と険しい顔をして拒絶する速水に、この花に対する強烈な思い入れがある事を知る。
そして、3つ目、社長室にて一人速水を待つ間、速水が捨てた週刊誌を取り上げマヤの記事を見て速水が急に飛び出していった事を憶測、速水の机の引き出しに残された桜小路とマヤの写真を見つけ、以前、速水の別荘にあったマヤの舞台写真のアルバムを思い出し不信感を募らせる。
結果、マヤの稽古場キッズスタジオに紫織はやってくるのである。
そして、マヤが紫のバラに顔を埋めているのを偶然見てしまう。
黒沼からマヤには、紫のバラの人という熱心なファンがいる事を教えられる。
この時、紫のバラというキーワードが、彼女の心の中で、不信に思っていた事柄を有機的に結びつけ、強い不安となり、結果、44巻の意外な行動へと続いて行くのである。

今まで、作者は、舞台が始まるまでマヤに様々な障害を用意してきた。
その障害は、マヤと同じ演劇畑の人間のマヤの才能に対する嫉妬が原因だったり、マヤ自身がなかなか役を掴めない事だった。
しかし、今回は恐らく違うのだろう。
速水真澄、鷹宮紫織、北島マヤ、これに、桜小路優をプラスした四角関係が、舞台の阿古夜の恋と重なり、重層的に物語を引っ張って行くのだろう。43巻にその兆候が見えており今後の展開の面白さを予感させる物となっている。



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