深読み第四弾  42巻レビュー

深読み42巻レビュー

いろいろと評判の悪い42巻だが、43巻がでてやっと位置づけがはっきりしたと思うので検証してみた。
結論からいうと、42巻はマヤが速水真澄に失恋し、そのショックから立ち直る話なのだ。
(サイト発表日:2009/05/02)



第一章 マヤについて

速水真澄とマヤは梅の谷で、お互いが魂の片割れではないかという体験をする。
速水真澄はマヤに会ってから東京に帰ろうと月影千草を訪ねるが会えない。マヤはマヤで東京に帰ったら速水真澄に自分の気持ちを伝えようとするが、時すでに遅く速水真澄は鷹宮紫織と婚約していた。
42巻は、梅の谷での体験の後、2人が初めて会うシーンから始まるのだが、出会いの場面は速水の婚約披露パーティの会場なのだ。ここで、速水と紫織は自分達こそが、2つに別れた1つの魂であるとマヤに告げるのだ。
マヤは失恋する。それも並の失恋ではない。魂の半身を思い切らなければならない、まさに身を切られるような失恋なのだ。
マヤは、あまりの失恋のショックで阿古夜の演技が出来ない。阿古夜の台詞をいう度に速水の事が思い出されて演技が出来ない。黒沼に怒られるが、どうしても出来ない。黒沼はマヤを謹慎処分にする。その夜、食欲もなく眠れないマヤは、虚ろな表情で布団の中で横になっている。翌日、稽古を休んだマヤは食欲がなく、虚ろな表情のまま落ち込んでいる。
そこへ、心配した桜小路(黒沼からマヤが失恋した事を聞いている)がマヤをデートに誘いオートバイで遊園地に連れて行く。ジェットコースターにのり、様々な遊具で遊ぶ内にマヤは気分転換ができる。
気分転換が出来たマヤが、最初に気がついたのはおなかがすいている事だった。

ここが実にリアルだ。失恋した事のある人はわかるだろう。精神的ショックで食欲がなくても、体はおなかが空くのである。

「お腹減ってたんだあたし、、、」
この場面が、マヤの失恋から立ち直るきっかけとして描かれている。そして、桜小路の肩を借りてゴンドラの中で思いっきり泣く事で失恋の胸の痛みはゆっくりと解けてゆくのだ。
その夜、桜小路のいとこの家で過ごした時、桜小路から
「僕は舞台の上で一真になる。だから君も阿古夜になってほしい」
といわれ、この言葉をきっかけに自分自身の失恋は切り離し、舞台の上で、一真の魂の片割れ、阿古夜になろうとするのである。

ここまででかなり失恋から立ち直っているが、もう一度、マヤには試練が待っている。
長い間、紫のバラの人から、バラが届かないのだ。マヤはてっきり、速水真澄(紫のバラの人)は、婚約者に夢中で自分の事を忘れていると思ってしまうのだ。
単に、好きな人が他の人を好きになっただけでなく、今まで、自分を精神的物質的に支えてくれた人が自分を忘れたのではないかと思うのだ。
これはかなり精神的にきつい。
だが、ここでも桜小路が慰めとなってくれる。桜小路がマヤをデートに誘うのだ。
ミュージカルをみて、地中海レストランに行き二人で楽しい時を過ごすのだ。
ところが、同じレストランにたまたま来ていた速水真澄は偶然それをみてしまう。
恐らく速水は桜小路とマヤのデートに水をさしたくなったのだろう。紫のバラをマヤに送るのだ。マヤは紫のバラの人を探して、店内を歩き回りレストランに隣接した桟橋におりて事故で川に落ちてしまう。桜小路に助けられたマヤは桜小路の優しさに、自分は何をしているのだろう、桜小路君はこんなに優しいのにと思うのだ。

失恋から立ち直るには次の恋と相場が決まっているが、まさに、セオリーどおり桜小路の優しさにすがるのである。
マヤの手から落ちる紫のバラにマヤの速水を忘れようとする思いが象徴的に表されている。
そして、42巻の最後、マヤは「速水さん、紫のバラの人、(略)、女性として愛されなくてもいい。女優としてあなたにとって最高の存在でありたい、(略)」という思いにまで自分自身の思いを昇華するのである。
42巻は、マヤの失恋のショックで始まり、失恋を乗り越え、速水への思いを、速水にとっての最高の女優になろうという演技への原動力に昇華して終わっているのである。
これが42巻のテーマなのだと私は思っている。

第2章 速水真澄について

さて、42巻にはもう一つ重大なテーマが、描かれている。
速水の心情である。速水がマヤをゆっくりとあきらめ自分自身の恋心を押し殺して行く様が描かれているのである。
42巻以前の速水の失恋の経緯を書いておこう。
速水は以前からマヤに失恋をしているのだが、単純に相手にふられたというレベルではなく、自分の気持ちを打ち明ける事なく、勝手に相手が自分を好きになる事はあるまいと自らあきらめたタイプの失恋なのである。理由は、
1.11歳も年が離れている。
2. 芸能社の社長が1女優のファンになるわけにいかない。
3.彼女の母親を死に追いやった。
だからたとえ、彼女が大人になったとしても自分を愛する事はあるまいと思ったのだ。
それでも、彼女が大人になれば様々な誤解がとけ、自分が紫のバラの人だと正体を明かせば彼女が振り向いてくれるかもしれないと思い彼は待つつもりでいた。マヤが紫のバラの人を、とても大切に思っている事を知っていたからである。
だが、残念ながら彼には、タイムリミットがあった。大都芸能の社長としていつまでも独身を通すわけにいかなかったというのがその理由だ。

見合いの話が「花とゆめ」に載ったのは、1980年代である。当時は結婚適齢期は、女はクリスマスケーキ(25歳)まで男は大晦日(31歳)までという風説があった。従って、大都芸能の社長が30過ぎてまで独り身でいるのは、とても世間体が悪い事だったのだ。今でこそ、結婚適齢期という意識は稀薄になったが、当時は、適齢期を過ぎた男女に世の中はかなり風あたりがきつかった。大都芸能の社長という社会的地位のある男がいつまでも独り身でいるわけにはいかなかったのだ。

そういう時代背景もあって、義父英介は真澄に見合いをさせようとする。一応、英介は真澄に好きな人がいるのかときいている。しかし、真澄は、いないと答える。普通、自分の恋愛事情を親に話す男はまれである事を考えれば速水の返事は普通の物である。しかも真澄は英介を憎んでいる。好きな人がたとえいても英介に話すわけにはいかない。
速水は一縷の望みをかけてマヤを芝居のチケットを使って呼び出し、紫のバラの人は自分であると打ち明けようとするが、月影千草が病院を抜け出した事によってそのチャンスも失われてしまう。
そして、マヤをあきらめ、紫の影で生きていこうと決心して見合いを承知するのである。こうして自らマヤの恋人になる可能性を潰した時から、速水の失恋は始まったのである。
そのため、非常にあきらめの悪い結果になっている。
すっぱりマヤをあきらめて、見合いした紫織に結婚を申し込むのかと思うとずるずると返事を引き延ばし、紫織からせまられた上、紫織が発作で倒れたと聞いて初めて結婚を申し込むのだ。
はっきり言えば、自分の気持ちを持て余してどうにもならない状態なのである。
マヤのように、自分の気持ちを前向きな原動力に昇華する事もできず、かといって、きっぱりと紫織を突き放す事もできずにいるのだ。
そこで、42巻だが、マヤとの梅の谷での幸せな邂逅さえ夢にしてしまった速水は、自分のおかれた立場に従って紫織との結婚へ邁進していくのである。婚約披露パーティでは突然のマヤの乱入で一瞬、心を乱されるがすぐに立ち直り見事に、紫織の婚約者を演じてしまう。
聖から桜小路とのデートの写真を見せられるが、ほぼ無視し、紫織との結婚式の打ち合わせに行くのである。また、紫のバラの人としてマヤにバラを送って励ます事もしていない。この辺は、物語に書かれていないが、私は速水がマヤの事を忘れようと努力していたのではと思っている。
42巻中盤、偶然、桜小路と会った速水が、桜小路とお茶をしながら「魂のかたわれ」について話すエピソードがある。
速水は桜小路の携帯を偶然拾い、そこに、桜小路とマヤが2人で写っている写真を見るのだ。速水は、桜小路とお茶を飲みながら「つきあっているのか」と質問するが、桜小路はマヤにふられた事、マヤとは舞台の上の魂の半身で舞台が終わればペアペンダントも一緒に出来ない只の芝居仲間だと話す。
ここで速水が多少ほっとしているように私には思える。
次に、地中海レストランのエピソードだが、速水は紫織と地中海レストランに食事にいく。二人は2階のバルコニー付きの部屋にとおされる。速水はバルコニーから偶然、桜小路とマヤが楽しく食事をしているのをみてしまう。
速水は、桜小路がマヤと付き合っていないと言っていた言葉を思い出し多少面白く思わなかった事は容易に想像がつく。また、マヤの姿を見るのは、婚約披露パーティでマヤと会って以来なのだ。その場でマヤに紫のバラを送ってしまう。
紫のバラをマヤに送る事で、2人のデートに水をさしてしまう所に速水のあきらめの悪さが出ている。
速水は、マヤが紫のバラを受け取り、紫のバラの人を探してレストランの中を歩き始めるのを2階からみている。
そして、マヤがレストランの中を紫のバラの人を探して歩き回り始めたので、ここで顔を合わせるわけにいかないと感じた速水は、急な仕事が入ったと紫織にいいわけをしてレストランを出て車に乗ろうとする。ところが、ここで事件が起きてしまう。マヤは紫のバラの人を探してレストランを歩き回り、レストランに隣接した桟橋におりて事故で川に落ちてしまう。人々の騒ぎを不信に思った速水は、レストランに戻りマヤが溺れそうになっているのをみて、あわてて、助けようとするが、後ろから走ってきた桜小路に追い抜かれてしまう。
川に飛び込んでマヤを助け、抱き上げてマヤを運ぶ桜小路の胸元には、イルカのペアペンダントが光っている。桜小路もマヤも速水には気がつかない。うなだれる速水。
ここは、雄同士の戦いのシーンであり、マヤを助けようと2匹の雄が争った結果、壮年の雄が若い雄に負けたシーンなのだ。
速水は自分の送った紫のバラが桟橋に無惨に打ち捨てられているのを見る。
この無惨に打ち捨てられた紫のバラに自分自身を投影させ、さらにみじめさを増すのだ。
作者美内すずえは、マヤの時もそうだったが、とにかく、主人公を徹底的にどん底まで落とすのだ。
そしてそこから這い上がらせるのだ。マヤの時もそうだった。今回は速水がその対象となっている。
マヤを抱き上げて堂々と運ぶ桜小路に対してうなだれる速水のなんとみじめな事か。
1巻から43巻までを通して速水真澄の最もみじめな姿がここに描かれている。

このレストランのエピソードは、速水が、マヤへの恋心を諦める布石として描かれたものだと私は思っている。
なぜならこの後、桜小路の携帯に保存されたマヤと桜小路の親密な写真を聖から見せられて、コーヒーカップをわり、43巻、水城の台詞「北島マヤはまだ桜小路優には返事をしていないそうです。」に対して「俺には関係のないことだ」に続いてゆくからだ。
失恋とは同じ相手に何度もするものである。速水の場合、彼女の母親を死においやってしまった事を思う度に、11歳年上である事を思う度に、自分が養子であり父親の意向に背けない、すなわち、紫織との結婚を断れない事を思う度に、胸に刃がつきささるような失恋の辛く苦い思いをするのだ。
42巻のもう一つのテーマは、速水のさらなる失恋、紫のバラの人としての徹底的な失恋が描かれたのだと私は思っている。
この後、みじめなまでに打ち砕かれた速水がどうやって、マヤとの恋を成就させていくのか、ぜひぜひ、見守って行きたい展開である。



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